もう一つのスイス史 ─ 独語圏・仏語圏の間の溝

  • 2012.10.11 Thursday
  • 06:54

一年に4回行われる国民投票の結果を前に、マスコミでは言語圏の間での選挙結果の違いや住民の反応の違いなどを分析して、「スイス独語圏と仏語圏の間には、『レシュティの溝』がある」と繰り返し語られてきた。

スイスドイツ語圏で人気のジャガイモ料理レシュティ、そして、何かことあるごとに語られる「レシュティの溝」をそのまま本のタイトルにし、その「溝」の部分に焦点を当ててスイスの歴史を見直したのが本書。

著者のクリストフ・ビュヒ氏はフリブールの出身。ここは独語圏と仏語圏が隣接するバイリンガル地域。

チューリッヒに本社のある Neue Zuercher Zeitungの仏語圏駐在記者として両言語の間を日常的に行き来している。

以前からこの二言語間の関係に強い関心を持ち、歴史をさかのぼり、多言語国家スイス誕生の経緯を調べ、スイスという国を結束させてきたものが何かを探ってきた。

本書の章立てを簡単に紹介しておこう。

1章 ドイツ語のスイスから多言語のスイスへ(1291年〜1481年)
2章 フランスの影響(1481年〜1798年)
3章 多言語国家スイスの誕生(1798年〜1848年)
4章「言語の溝」掘り(1848年〜1918年)
5章 多言語、禍から福に(1918年〜1945 年
6章 「レシュティグラーベン」出現(1945年〜2000年)

2000年で終わっているのは、原書の初版が2000年だったからで、著者の希望で翻訳には2003年刊行の三版が使われた。

その三版の刊行からも9年が経過し、その間にスイスの事情も大きく変わったことから、日本語版のための「追記」が付されている。

この「追記」を読むと、2000年以降、今日までスイス社会が大きく変化していることが手に取るようによく分かる。

日本におけるスイス史の第一人者で、著作も多い森田安一氏(日本女子大学名誉教授)が推薦文を寄せている。

「スイスは言語的対立・融和を繰り返しながら多言語国家を形成してきた。本書はいわば言語問題から見たスイスの歴史と言える。しかも日本におけるこれまでのスイス紹介では手薄であったフランス語圏の記述が多く、スイス像をたいへん豊かにしてくれる内容になっている。是非推奨したい」  

なお、本書は翻訳者の片山淳子さんに直接注文できる。
ご希望の方は、片山さんに直接ご連絡下さい。

33.40 CHF(+小包郵送代10.- CHF)
E-mail : junko.katayama@bluewin.ch
Fax : 044 984 14 79

RESET BEYOND FUKUSHIMA 福島の彼方へ

  • 2012.08.11 Saturday
  • 07:40
2011年3月11日の東日本大震災直後、ひとりの青年カメラマンが、それまで勤めていた金融関係の職を辞し、被災地に飛び込み、被災者たちに向き合いながら故郷を失った人々を、目に見えない放射能の脅威に苦しむ人々を、原発事故現場で復旧作業をする人々を写真に撮り続けている。

フォトジャーナリスト小原一真(おばら・かずま)だ。 スイス・テレビ局の取材班が、福島原発取材の最中に、この気鋭のカメラマン小原一真に出会い、小原が福島についての写真集を出したいと言う話が出た。

早速、スイス人カメラマン、アドリアーノ・ビオンド氏が、「一人のカメラマンの願い」を遙か遠くの人々に伝えるべく、旧知の出版編集者ラース・ミューラー氏と相談し、二人はスイスで出版する決心をした。

そして、東日本大震災・福島第一原発事故1周年前の3月10日に間に合わせるべく、わずか5週間で写真集出版に漕ぎ着けた。

3月10日、バーゼルの新聞に出版の記事が載り、この日ベルンで行われた在スイス芸術家が取り組んでいる東日本被災地支援CHBOX展にビオンド氏自身がスタンドを出し、刷り上がったばかりの写真集を会場で紹介した。

カメラマン小原一真は、2011年8月上旬に、作業員として福島第一原発に入構し、その時のルポルタージュを発表している。

政府、東電の取材規制下で、報道陣が福島第一原発を公式に取材できたのは11月12日だったことを考えると、その大胆さに驚かされる。

作業員たちのポートレートとインタビューでは、想像を絶する被曝環境で作業をする人々の生々しい体験と思いが綴られている。

まさに底辺からの声だ。 写真集の「プロローグ」で小原は語る。

「僕がやるべきことは、当事者に出会った自分の体験を遙か遠くの人にも届け、写真を通して被写体と出会い、被災地に思いを馳せてもらうことである。

それが、被災地で写真を撮り続けている一人のカメラマンの願いである」 多くの人に手にしてもらいたい写真集だ。

この写真集出版に当たっては、(株)デルフォニックスがサポートしているが、デルフォニックス渋谷、表参道ヒルズ、丸の内、パリ・ルーヴルの4店舗でも写真集が販売されている。

デルフォニックスでの写真集販売の収益は、東日本大震災の義援金として、日本赤十字社に寄付される

小原一真オフィシャルサイト:http://kazumaobara.com/

Sprechendes Wasser(話す水)

  • 2012.08.11 Saturday
  • 07:38
評価:
Juerg Halter,Tanikawa Shuntaro
Secession Verlag
¥ 3,332
(2012-04)

2007年から2011年に掛けて、スイス人の若手詩人Juerg Halter と谷川俊太郎が連詩を書いた。

それが4月23日に連詩集『Sprechendes Wasser (話す水)』として出版される運びとなった。

Juerg Halterがベルンで撮った写真と谷川俊太郎が東京で撮った写真も収録されたビジュアルな連詩集となる。

この連詩集の出版を記念して、スイス、ドイツで出版記念朗読会が企画された。

スイスではゾロトゥルンとチューリッヒで行われた。

100%再生可能へ 欧州のエネルギー自立地域

  • 2012.08.11 Saturday
  • 07:30
評価:
滝川 薫,村上 敦,池田 憲昭,田代 かおる,近江 まどか
学芸出版社
¥ 2,310
(2012-03-10)

地球の将来を見据える提言!! 滝川 薫さん(環境ジャーナリスト)編著の新刊本!

昨年3月11日の福島第一原発事故後、スイス、ドイツ、イタリアなどが明確に脱原発の道を将来の国のエネルギー政策として採択した。

スイス連邦政府は、今年6月に2050年までの新エネルギー政策を国会に提案することになっている。

去る3月7日、連邦行政裁判所は従来から問題があるとされてきたミューレベルク(Muehleberg)原発を2013年6月で停止することを求める判決を下している。

一方、3月20日には、同原発の経営母体、ベルン電力会社が、同原発を最長2022年まで稼動させ、その間に、再生可能エネルギーへの移行を準備する新戦略「BKW2030」を発表している。

中・長期的に脱原発は時代の流れになりつつある一方で、「脱原発を早めると今までの豊かな生活を維持できなくなる」「原発をなくし、代替エネルギーとして化石燃料を使えば、地球温暖化の解決が遠のく」「スイスのような資源の少ない国では、脱原発をするとエネルギーの自立ができない」など、うしろ向きの論調は依然として根強くある。

エネルギー自立する地域を紹介 福島以後、脱原発が語られる中、将来のエネルギー問題を真剣に議論し、具体的ビジョンを打ち出していく段階が来ている。

こうした中、エネルギーの自立を早くからめざし、試行錯誤しながらも着実に成果を上げてきているドイツ、オーストリア、スイス、イタリア、デンマークの州・市町村など、地域レベルの先進的取り組みについて具体的数字を上げながら紹介し、エネルギー自立への道筋、方法、手続きなどを丁寧に紹介する本が、今年3月に出版された。

本のタイトルは、『100%再生可能へ 欧州のエネルギー自立地域』。本書を編集したのは、ベルン州在住の環境ジャーナリスト滝川薫さん。

滝川さんについては、すでに『グリエツィ』第54号(2011年夏号)「スイスの日本人」でも紹介している。

脱原発、再生可能エネルギー、省エネ住宅、交通問題など、スイス、欧州の動きを取材し、発信している環境ジャーナリストだ。

その滝川さんが、ドイツ、イタリアに住むジャーナリストたちと一緒に執筆・編集したのが本書だ。 本書の構成は、大変すっきりしている。

まず、「第1章 欧州におけるエネルギー自立の潮流」で、「地域のエネルギー自立とは何か」を定義し、そのメリットが何か、自立を促進する制度が紹介され、村から都市、州、国へと広がるエネルギー自立の運動が紹介されている。

続いて、第二章から第六章で、ドイツ、オーストリア、スイス、イタリア、デンマークの地域での実際の「エネルギー自立」の取り組みが紹介されている。

著者たちが実際に現地に足を運び、エネルギー自立を推進している主人公たちの話をじっくり聞き、執筆していることがよく分かる。

そして、「第七章 エネルギー自立に必要なフレームワーク」で、ひとつひとつの地域が「エネルギー自立」の取り組みを進めるときの必要な枠組みと行動のツールが紹介されている。

滝川さんは「はじめに」で「本書は、著者たちが読者を現場に案内しながら、その背景事情についてセミナーを行うような構成」と書いているが、そのとおり、教育的視点が貫かれているのが頼もしい。

「地域のエネルギー自立」の牽引車 再生可能エネルギーと省エネ

ここでは「地域のエネルギー自立の定義」と「2000W社会」について、本書に沿って紹介し、あとは本書を実際に手にしてじっくり読んでいただきたい。

「『エネルギー自立地域』とは、一年間に地域内で消費されるエネルギーの量と、地域内で生産される再生可能エネルギーの量が、少なくとも同じである地域を意味する」(本文10 p.)。

そして、重要なことは、「この『自立』は、地域社会が一体となって推進し、また省エネ対策を伴うものでなくてはならない」(同10 p.)。

「地域のエネルギー自立」は、再生可能エネルギーを着実に増やし、同時に省エネを大胆に進めて初めて実現することが明記されている。 省エネの具体例として、連邦工科大学チューリッヒ校が開発した「2000W社会」が紹介されている。再び本書から引用しよう。

「世界の平均的な1人あたりの一次エネルギー消費量を出力に換算すると2000Wになる。100Wの電球20個を灯すエネルギーを常に使っているという状態で、年間消費量では1万7520kWhとなる。

これには飛行機燃料や生活、仕事で使うエネルギー全般が含まれる。

対して、スイスで暮らす人の1人あたりの出力需要は6500Wで、CO2排出量では年間 8.5 tである(飛行機を含む)。

これを世界平均の2000Wまで減らし、その75%以上を領土内の再生可能エネルギー源で生産できれば、持続可能なエネルギー利用と温暖化防止目標を達成できるという。

1人あたりのCO2排出量は年間1tになる。

2000Wは1960年のスイス社会の消費レベルだが、今日の技術を用いれば、生活の質を損なうことなく2000W社会を実現することができる。

ただし一次エネルギー消費量の大きな原子力を利用すると、このビジョンは達成できない」(本文 p. 12)。

滝川さんは、「地域のエネルギー自立が、大局的には気候・エネルギー問題の、そして足元では地域社会の未来の鍵を握るテーマであると確信するようになった」(「はじめに」p.3)という。

こうした著者たちのメッセージをしっかり受け止めながら、自分たちの生活スタイルをじっくり見直し、私たちひとりひとりに今何ができるか、地球の将来について考えていきたいものだ。

なお、スイス在住者は滝川薫さんにも本書を直接注文できる。

送料込みで28.-CHF。

ご希望の方は、下記メールアドレス宛ご注文下さい。

kaori.takigawa@gmx.ch

滝川薫さんのブログ「滝川薫の未来日記」
blog.goo.ne.jp/swisseco

『100%再生可能へ 欧州のエネルギー自立地域』のウェブサイトでは、同書に関わる情報を 5 人の著者が更新していきます。
blog.livedoor.jp/eunetwork/

uste avant la pluie / 「雨の間際」

  • 2012.01.11 Wednesday
  • 07:52
『Juste avant la pluie』(仏語「雨の間際」)
Yvette Z’Graggen 出版社L’Aire出版
ISBN: 9782881089596 30.- CHF

1920年生で、ジュネーヴ在住の作家Yvette Z’Graggen(イヴェット・ツグラッゲン)は、スイスで最も読まれている作家の一人に違いない。

長い間フランス語圏のラジオ局(RSR)で文化・文学の番組を多く制作してきた。

並行して小説、自伝、短編など約20冊を発表してきたが、多くの読者を得、数々の文学賞を受賞してきた。

中でも、ナチス・ドイツの兵士として戦争に参加した祖父Matthias Bergをベルリンに訪ねながら、母が毛嫌いしていた祖父とは違う素顔を発見するという小説『Matthias Berg』(ISBN 2-88108-518-0 、Edition L’Aire、 1995年)は、スイス全国の学校で教材としても読まれ、話題を読んだ作品である。

『La Punta』 (ISBN 978-2881083792、L’Aire、1992年)は、ジュネーヴで定年を迎えたけれど、住宅費の高騰で住むところが見つからない夫婦が、一大決心をしてスペインに引っ越して生活を始める話。

妻は新天地で活力を得、夫は内へ閉じこもっていく姿を描く作品。

自伝的小説で、小説の中で主人公のFransoiseが小説を書いていくので本編の部分と「小説」の部分が交錯しながら展開していくのが面白い。

そのYvette Z’Graggenが、老いの坂をほとんど登り切った2009年に書き始めた作品が、今回紹介する『Juste avant la pluie』である。
2009年、世間では第二次世界大戦70周年を記念したセレモニーが行われ、マスコミも大々的に報道していた。

それらの報道を聞きながら、長らく忘れていた記憶がYvette Z’Graggenの頭に甦ってくる。

1938年、18歳のひと夏の恋の思い出が走馬燈のようによぎっていく。

相手はベルリンからジュネーヴに休暇に来ていたドイツ人青年Alex。

ナチス・ドイツ下で、ドイツに戻れば将校として戦争に赴くことになっている。

彼女は、青年のことを恋し、優しく愛撫してくれることを待っていた。

ところが、青年がキスをしようとすると、気持ちとは裏腹に、拒絶反応を起こす。

1938年のこの体験がどうしても納得がいかず、Yvette Z’Graggenは、Yvieというエイリアンを主人公にして、まったく違った展開の話を描いていく。

それが『Juste avant la pluie』だ。現実に起こった話とは反対に、YvieはAlexのキスを受け入れ、二人は結ばれる。

Alexがベルリンに戻った後、Yvieは妊娠していることを知る。

周囲の反対や心配をよそに彼女は、堕胎を拒絶し、子供を産んで育てる道を選ぶ…。

女性の解放、精神の自由をテーマに作品を発表し続けたYvette Z’Graggenの真骨頂が凝縮されている作品だ。

後半の部分(第3章)では、作家自身が世に送り出した主人公の女性たちに語りかける部分がでてくる。

90歳を迎える作家の、人生の総括のような部分で、書くことを通じて自分自身を客観視し、昇華させていく潔さに驚かされる。

フランス語の分かる人は是非とも読んで欲しい。『Matthias Berg』『La Punta』は独語訳があり、他の作品でも翻訳されているものが多い。

ケアチームジャパン  エンディングノート国際版

  • 2012.01.11 Wednesday
  • 07:45
『ケアチームジャパン  エンディングノート国際版』
Care Team Japan Ending Note International Edition
編集・発行:ケアチームジャパン
ISBN 978-3-033-03075-6
定価:2300円、25.- CHF

NALC(日本アクティブライフ・クラブ)が企画・編集して誕生した「エンディングノート」は、2003年の初版以来、大変好評で版を重ねている。

「エンディングノート」とは、旅立つ者が残される者へ大切な記録や思いを書き残しておく書き込み式ノートのことだ。

遺言という形式にこだわらず、気軽に書き込み、書きながら自分の人生を見つめ直す機会にもなることから、中高年に静かなブームとなっている。

ところが、今まで出版されてきた「エンディングノート」は、日本に居住する読者を想定し、日本語だけで編集されている。

ケアチームジャパンでは、発足10周年の記念行事の一環として、海外に住む日本人のために、日本語と英語の二カ国語で編集された「エンディングノート国際版」を出版することを決め、昨秋、一斉に売り出した。

見開きの左右に日本語と英語がページ配置されているので、非常に分かりやすい。

さまざまな事情で日本以外の土地で暮らす人の数は年々増加の一途を辿っている。

国際結婚が広がる中で、日本語だけでなく、国際語となっている英語で書き残すことで、日本語を解さない家族などにも貴重な記録になっていくこと請け合いだ。

既に購入し、使い始めている人たちからは、大好評の感想が届いている。

「内容に対して価格が安すぎると感じるほど充実した内容」
「老いと共に日本語のほうが楽なのでとても助かる」
「日本語のわからない子供たちに残すことができるのでありがたい」
「細やかに行き届いた素晴らしい内容」
「後半の方は普段は考えることもないような項目が多く、改めて考えるいい機会になると感じた」

「エンディングノート国際版」についての問い合せ・注文は、ケアチームジャパンのホームページからが便利。

www.careteamjapan.com
E-mail:careteamjapan@gmail.com
Tel 079 771 84 38

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